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2022.05.23
ECサイトを運営するなら避けて通れない「特定商取引法(特商法)に基づく表記」。制作会社に依頼する際に何を準備・確認すればよいのか、2026年現在進行中の次期改正の動向まで踏まえて解説します。特商法を正しく理解すれば、制作会社へ的確な指示を出せるようになり、リニューアル後のトラブルも防げます。
特定商取引に関する法律(特定商取引法)は、事業者と消費者の間で生じるトラブルを防ぐために制定された法律です。訪問販売・通信販売・電話勧誘販売など複数の取引類型を規制しており、インターネット上での販売(通信販売)もこの規制対象に含まれます。
ECサイトで商品やサービスを販売している事業者は、「通信販売業者」として特商法の適用を受けます。消費者庁が管轄しており、違反した場合は行政処分や罰則の対象となります。
特商法に違反した場合のリスクは決して軽くありません。主な罰則・処分は以下のとおりです。
「表記が漏れているだけ」と軽く考えがちですが、消費者からのクレームや競合からの通報をきっかけに行政調査が入るケースもあります。ECサイトを制作する際は、法令遵守を前提とした設計が不可欠です。
通信販売として特商法の規制を受けるのは、不特定多数の消費者に向けてインターネット・カタログ・テレビなどを通じて申込みを受ける取引です。以下のような販売形態がすべて対象になります。
BtoB取引(事業者間取引)は基本的に特商法の対象外ですが、BtoC(一般消費者への販売)が含まれる場合はすべて対象と考えて対応することが安全です。
特定商取引に関する法律 第11条(通信販売の広告)では、通信販売を行う事業者に対して以下の事項の表示を義務付けています。これらを「特商法に基づく表記」としてECサイト内に掲載する必要があります。
| 項目 | 表示内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 販売業者名 | 正式な会社名または氏名 | 屋号だけは不可。登記名を使う |
| 住所 | 事業所の所在地 | 個人の場合は後述の特例あり |
| 電話番号 | 問い合わせ先の電話番号 | 個人の場合は後述の特例あり |
| 価格 | 商品・サービスの価格(税込表示) | 送料も明示する |
| 支払方法 | クレジットカード・代引き・振込など | 使える決済手段をすべて記載 |
| 支払時期 | いつ支払いが確定するか | 受注確認後・カード決済時など |
| 引渡時期 | 商品の発送・提供時期 | 〇営業日以内など具体的に |
| 返品・解約条件 | 返品・キャンセルのルール | 「返品不可」の場合も明記 |
| 販売数量の制限 | 購入上限がある場合 | 1人1点のみ等の制限がある場合に表示 |
デジタルコンテンツ(ダウンロード販売)の場合は、さらに「動作環境(対応OS・ブラウザなど)」の表示も必要です。
2022年6月に施行された改正特定商取引法では、個人事業主がインターネット通販を行う際、住所・電話番号を一定条件のもとで非公開にできる制度が導入されました(特定商取引に関する法律 第11条の2)。
この制度を利用するには以下の条件を満たす必要があります。
住所・電話番号の代わりに「請求があった場合は遅滞なく開示する」旨を表示し、メールフォームなど別の連絡手段を設けることで対応できます。副業・個人出品者には実用的な制度ですが、条件を正確に把握した上で設定することが重要です。
2022年6月1日に施行された改正特定商取引法は、ECサイト運営者にとって非常に大きな変更を含む重要な改正でした。現在稼働中のすべてのECサイトが対応済みであることを確認する必要があります。
改正法の中で最も実務への影響が大きかったのが、購入申込み直前の「最終確認画面」への表示義務です(特定商取引に関する法律 第12条の6)。
購入ボタンを押す直前の画面(カートの確認画面・注文確認ページ)に、以下の6項目を明確に表示しなければなりません。
これはECサイトのシステム要件として制作・リニューアル時に対応が必要です。フッターの特商法ページにだけ記載すれば良い、という考え方は通用しません。
定期購入(サブスクリプション)サービスについては、消費者が「定期購入だと気づかなかった」というトラブルが多発したため、改正法では特に厳しい規制が課されています。
最終確認画面において以下を明確に表示することが必要です。
「2回目以降〇〇円」という表示を初回の案内と一緒にわかりやすく出す設計が求められます。フォントサイズを小さくして目立たないようにする行為は違反になります。
2022年改正では、罰則強化も行われました。悪質な定期購入商法に関わる違反行為については罰則の見直しが行われ、悪質事業者に対してより厳格な処分が可能になりました。罰則は違反類型によって異なるため、詳細は消費者庁の特定商取引法ガイド(https://www.no-trouble.caa.go.jp/)の「罰則」ページで確認してください。
2026年1月、消費者庁は「デジタル取引・特定商取引法等検討会」を設置し、次期改正に向けた審議を開始しました。2026年2月・3月・4月・5月と定期的に検討会が開催されており、2026年夏頃に中間とりまとめを公表する予定です。
2026年6月現在、改正法は未施行です。現時点で施行されている法律は2022年改正版です。本記事では検討会の動向として紹介していますが、確定情報は消費者庁の公式ページをご確認ください。
検討会では以下のような方向性が議論されています。
ダークパターン規制
ダークパターンとは、消費者が意図しない行動(定期購入への誘導・解約の妨害など)をとるよう設計された悪意あるUI/UXのことです。「解約ボタンを見つけにくくする」「キャンセル時に複数の確認画面を挟む」といった手法が規制対象として検討されています。
無償取引・フリーミアムへの規制拡大
現行の特商法は「有償取引」を対象としており、無料のサービスや無料会員登録は規制外でした。しかし、無料登録から有料への自動移行、無料トライアル後の自動課金などが問題になっているため、無償取引についても一定のルール整備が検討されています。
訪問販売・SNS勧誘被害への対応強化
SNSを通じた勧誘から訪問販売・マルチ商法へ誘導する手口への対応強化も議題に挙がっています。
2026年夏頃の中間とりまとめの後、改正案の作成・パブリックコメント・国会審議を経るため、改正法の公布・施行は2027年以降になる見通しです。
ECサイト制作を検討している事業者は、現行法(2022年改正版)への完全対応を最優先としつつ、次期改正の動向も引き続き注視することをおすすめします。
特商法に基づく表記は「特定商取引法に基づく表記」というタイトルのページを作成し、サイトのフッターからリンクを張るのが一般的な設計です。消費者が購入前に確認できる場所に置くことが重要で、フッターへの常時表示がもっとも確実な方法とされています。
リンクテキストは「特定商取引法に基づく表記」「特商法表記」「販売業者情報」などがよく使われますが、「特定商取引法に基づく表記」という正式な表現を使うのが無難です。
特商法表記のページは、スマートフォンからでも読みやすいデザインにすることが重要です。総務省の通信利用動向調査によれば、スマートフォンからのインターネット利用率は年々増加しており、ECサイトもモバイルファーストで設計することが標準になっています。
制作時に押さえておきたい視認性のポイントは以下のとおりです。
特商法表記は義務であると同時に、消費者の「ここで買って大丈夫か」という不安を解消するための信頼設計でもあります。次のような工夫で、より信頼感の高いページになります。
当社(WEB制作.com)でECサイトを制作する際も、特商法表記ページのデザインはコンバージョン率に影響する重要な要素として設計を行っています。
競合記事の多くは「自分で対応する方法」を解説していますが、制作会社に発注するケースでは「依頼時に確認すべき事項」を把握しておくことが重要です。以下の4点を発注前に確認してください。
制作会社によっては、特商法表記ページの「HTML/CSSの制作」は行うが、「記載内容の確認・法的アドバイス」は対応範囲外としていることがあります。
制作会社に確認すべきことは、主に以下の2点です。
なお、特商法の内容に関する最終的な確認・責任は事業者(発注者)にあります。制作会社は表記ページを作ることはできますが、法令解釈は専門家(弁護士や行政書士)に相談することを推奨します。
2022年改正対応として最も重要なのが、購入直前の最終確認画面への6項目表示です。これはECサイトのフロントエンド設計とシステムが連動する要件であり、制作会社側が対応できるかどうかを確認する必要があります。
確認すべき内容は以下のとおりです。
これらは後から追加対応すると工数・費用がかさみやすい箇所です。設計段階から要件に含めることで、コストと手戻りを最小化できます。
特商法は今後も改正が予定されており、2027年以降に次期改正法が施行された場合、ECサイトの表示内容やシステムを更新する必要が生じます。
制作会社との契約において以下を確認しておくと安心です。
長期運用を前提とするECサイトでは、法改正への継続対応を前提とした保守体制を整えることがリスク管理の観点から重要です。
Shopify・EC-CUBE・WooCommerce・BASE・STORESなど、ECサイト構築に使われるプラットフォームにはそれぞれ特商法表記の設定箇所や方法が異なります。
制作会社が利用するプラットフォームの特商法対応に精通しているかを確認するポイントは以下のとおりです。
プラットフォーム選定の相談から対応してもらえる制作会社を選ぶと、特商法対応もスムーズに進みます。
Q. 特商法に基づく表記はどこに掲載すればいいですか?
A. 一般的にはサイトのフッターに「特定商取引法に基づく表記」へのリンクを設置します。消費者が購入前に確認できる位置であることが重要です。フッターへの常時表示が業界標準となっています。
Q. 個人事業主でも住所を非公開にできますか?
A. 2022年改正特定商取引法により、一定の条件を満たす場合は住所・電話番号を非公開にすることができます。消費者から請求された場合に速やかに開示できる体制と、代替の連絡手段(メールフォームなど)の設置が条件です。
Q. 制作会社に発注すれば特商法対応は全部やってもらえますか?
A. 特商法表記ページのデザイン・コーディングは制作会社が担当できますが、記載内容の法的な確認・最終責任は事業者(発注者)にあります。法的アドバイスが必要な場合は弁護士や行政書士への相談もご検討ください。
Q. 2026〜2027年の次期改正はいつ施行されますか?
A. 消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会」が2026年1月に設置され、2026年夏頃に中間とりまとめを予定しています。改正法の施行は中間とりまとめ後の国会審議を経るため、2027年以降になる見通しです。
Q. 定期購入(サブスクリプション)の特商法対応は何が必要ですか?
A. 最終確認画面(購入ボタンを押す直前の画面)に、定期購入である旨・各回の金額・総支払金額・解約条件と方法を明確に表示することが義務付けられています(2022年改正対応)。フォントサイズを意図的に小さくして目立たなくする行為は違反になります。
特定商取引法に基づく表記は、ECサイトを運営するすべての事業者に義務付けられた法令対応です。2022年改正ではカート前の最終確認画面への6項目表示・定期購入の明示義務が追加されており、古い設計のまま運営しているサイトは今すぐ対応確認が必要です。
また、消費者庁の検討会では2026年現在も次期改正の審議が進んでおり、ダークパターン規制や無償取引への規制拡大などが検討されています。施行は2027年以降の見通しですが、対応に向けた準備は早めに始めておくことが賢明です。
ECサイトを制作会社に依頼する際は、以下の4点を必ず確認してください。
大阪でECサイト制作を検討中の方は、特商法対応を含めた制作の進め方についてお気軽にご相談ください。