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2026.05.28
中国語対応サイトを制作するとき、CSSの font-family に Microsoft YaHei を指定した経験はありますか?Windowsに標準搭載されているフォントだからと、何となく使っている方も多いのではないでしょうか。しかし、Microsoft YaHeiの商用利用には、見落としがちなライセンスの落とし穴があります。
実はこのフォント、著作権者はMicrosoftではなく中国のフォント会社・方正字庫(北京北大方正電子有限公司)です。無断で商用利用した場合、多額の損害賠償を求められた実例も存在します。
この記事では、Microsoft YaHeiのライセンスの正しい理解から、CSS実装のリスクの違い、そして商用利用に安全な代替フォントのCSSコードまでをWeb制作者向けに解説します。
Microsoft YaHei(中国語表記:微軟雅黒)は、Windows Vistaから標準搭載されている簡体字中国語フォントです。「雅黒」とは「上品な黒体(ゴシック体)」という意味で、従来の中国語ゴシック体と比べてスッキリとした現代的なデザインが特徴です。
このフォントは、中国最大手のフォント会社方正字庫(北京北大方正電子有限公司)とMicrosoftが共同で製作しました。さらに、モノタイプ・イメージング社(現在のMonotype)が画面表示の最適化を担当しています。
開発の背景には、Windows XP時代に使われていた旧来の中国語フォント(中易宋体など)がスクリーン上で読みにくかった問題があります。Microsoft YaHeiはClearType技術に対応した設計で、液晶ディスプレイでの可読性が大幅に向上しています。
ここが最も重要なポイントです。Microsoft YaHeiの著作権はMicrosoftではなく、方正字庫が保有しています。
方正字庫は北京大学の研究者が創業したフォント会社で、中国でトップシェアを誇ります。同社は自社フォントを厳格にライセンス管理しており、無断使用に対しては訴訟も辞さない姿勢で知られています。
Windowsを購入したことでMicrosoft YaHeiが手元にあっても、それはあくまでWindowsの利用者として使う権利を得ているにすぎません。次のような用途は、Windowsライセンスの範囲外と考えるべきです。
方正字庫は自社フォントを以下の3カテゴリに分類しています。
| 分類 | 内容 | 商用利用 |
|---|---|---|
| 免费字体(フリー書体) | 方正黒体・方正書宋・方正仿宋・方正楷体など | 条件付きで可 |
| 基础字体(基本書体) | 汎用的な書体群 | 有償ライセンス必要 |
| 精选字体(精選書体) | 高品質・デザイン書体 | 有償ライセンス必要 |
Microsoft YaHei(微軟雅黒)は「免费字体」には含まれていません。商用プロジェクトで使用するには、方正字庫から有償ライセンスを別途取得する必要があります。
ここは多くのWeb制作者が混同しているポイントです。一口に「Microsoft YaHeiを使う」といっても、実装方法によって法的リスクが大きく異なります。
body {
font-family: "Microsoft YaHei", "微软雅黑", sans-serif;
}
この書き方は、ユーザーの端末にインストールされているMicrosoft YaHeiを参照するだけです。フォントファイルをサーバーに置いたり、配信したりするわけではありません。
この場合、フォントを実際に使う主体はエンドユーザーであり、ユーザーはWindowsを通じてすでに正規のライセンスを得ています。そのため、制作者側が直接ライセンス違反を問われるリスクは相対的に低いと考えられています。
ただし、グレーゾーンであることに変わりはありません。方正字庫が「CSS指定も商業目的の利用に含む」と解釈した場合、クレームが来る可能性をゼロとは言い切れません。
/* NG例:フォントファイルを自サーバーに置いて配信 */
@font-face {
font-family: "Microsoft YaHei";
src: url("/fonts/msyh.ttf") format("truetype");
}
これはフォントファイルの再配布に該当します。方正字庫の規約では明確に禁止されており、ライセンス違反のリスクが高い実装です。フォントファイルをサーバーに置いて不特定多数に配信することは、商用・非商用を問わず許諾なしには行えません。
font-family で参照するだけの場合、もうひとつ重要な挙動の違いがあります。
| OS | Microsoft YaHei の表示 |
|---|---|
| Windows | 標準搭載されているため表示される |
| macOS | インストールされていないためフォールバックフォントが表示される |
| iOS / Android | 基本的にインストールされていないためフォールバック |
つまり、font-family: "Microsoft YaHei" を指定しても、Macユーザーやスマートフォンユーザーには全く別のフォントが表示されます。Windowsユーザーだけに特定のフォントを見せたいという意図でなければ、この指定は実用面でも意味が薄いといえます。
| 実装方法 | リスクレベル | 推奨度 |
|---|---|---|
| font-family 参照のみ | 低〜中(グレーゾーン) | 非推奨 |
| @font-face でサーバー配信 | 高(明確な違反リスク) | 禁止 |
| 商用ライセンス取得後に使用 | なし | 可(コスト要確認) |
| 代替フォント(Noto Sans SC等)を使用 | なし | 最推奨 |
クライアントへの説明責任を考えると、「法的に明確なフォントを選択する」という判断が最もリスクヘッジになります。
方正字庫がフォントの著作権侵害に対して積極的に法的措置を取ってきた企業であることは、過去の事例からも明らかです。
2008〜2011年にかけて、P&Gは中国市場向けシャンプー「飄柔(ピャオロウ)」のロゴに方正字庫のフォント(倩体)を使用しました。方正字庫はこれを著作権侵害として提訴し、方正字庫は134万元(約2,500万円相当)の損害賠償を請求しました。訴訟は方正字庫側の勝訴に終わった事件として広く知られています。
この事件が示す教訓は以下の通りです。
日本国内のWebサイトでも、中国語ページを含むサイト・中国向けサービスのサイトでMicrosoft YaHeiを使用している場合、方正字庫のライセンス規定が及ぶ可能性があります。「日本法人だから大丈夫」という判断は根拠がなく、リスク管理の観点からも安全な代替フォントへの切り替えを強くおすすめします。
また、WEB制作.comが以前公開した記事「フォントにあったこわーい話」でも、中国語フォントのライセンス問題について触れていますので、あわせてご参照ください。
Microsoft YaHeiを使わずに中国語対応サイトを制作するための、商用利用が明確に認められているフォントを紹介します。
最もおすすめの選択肢です。GoogleがAdobeと共同開発したNotoファミリーの簡体字中国語版で、SIL Open Font License(OFL)のもとで公開されています。OFLライセンスは商用利用・埋め込み・配布・改変まで幅広く許可されており、法的リスクがほぼゼロです。
Google Fontsを経由してCDNで配信できるため、サーバーへのフォントファイルアップロードも不要です。
Google Fonts CDN を使った実装例:
<!-- HTMLのheadに追加 -->
<link rel="preconnect" href="https://fonts.googleapis.com">
<link rel="preconnect" href="https://fonts.gstatic.com" crossorigin>
<link href="https://fonts.googleapis.com/css2?family=Noto+Sans+SC:wght@400;700&display=swap" rel="stylesheet">
/* CSSで指定 */
body {
font-family: "Noto Sans SC", "Microsoft YaHei", sans-serif;
}
特徴:
AdobeとGoogleが共同開発したオープンソースの多言語フォントです。Adobeブランドでは「Source Han Sans(源ノ角ゴシック)」、Googleブランドでは「Noto Sans」として提供されており、実質的に同じデザインです。
CSS @font-face を使った実装例(jsDelivrを使用):
/* jsDelivr CDN経由での実装例 */
@font-face {
font-family: "Source Han Sans SC";
font-style: normal;
font-weight: 400;
src: url("https://cdn.jsdelivr.net/npm/cn-fontsource-source-han-sans-sc-vf/font.woff2") format("woff2");
font-display: swap;
}
body {
font-family: "Source Han Sans SC", "Noto Sans SC", sans-serif;
}
Adobe Fonts(旧Typekit)で使う場合:
Adobe Creative Cloudのサブスクリプションがあれば、Adobe Fonts経由で @import するだけで利用できます。商用利用もAdobe Fontsの利用規約の範囲内で許可されています。
特徴:
方正字庫が「免费字体(フリー書体)」として提供する無料書体です。商用利用に一定の条件があります。
| 書体名 | 読み方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 方正黒体 | ほうせいこくたい | シンプルなゴシック体 |
| 方正書宋 | ほうせいしょそう | 可読性の高い明朝体 |
| 方正仿宋 | ほうせいほうそう | 公文書・報告書に適した書体 |
| 方正楷体 | ほうせいかいたい | やわらかな楷書体 |
重要な注意事項:
方正字庫のライセンスは改訂されることがあります。商用利用前は必ず方正字庫の公式サイトで最新のライセンス条件を確認してください。また、これらの書体であってもフォントファイルをWebサーバーで配信する場合は別途確認が必要です。
中国語対応サイトを制作・改修する際は、以下の項目を確認してください。
font-display: swap の使用・サブセット化の検討)Microsoft YaHei(微軟雅黒)のCSS指定について、ポイントを整理します。
font-family で参照するだけの場合、ユーザー端末のフォントを使うため制作者側のリスクは低い傾向がありますが、法的にグレーゾーンであることは変わりません。また、WindowsユーザーにしかMicrosoft YaHeiは表示されないため、実用面でも効果が限定的です。
@font-face でフォントファイルを配信する行為は、方正字庫のライセンスに違反する可能性が高く、商用プロジェクトでは絶対に避けるべきです。
最も安全で実用的な選択肢は Noto Sans SC です。Google Fontsから無料で使えるOFLライセンスのフォントであり、商用利用・Webフォントとしての配信どちらも問題ありません。
中国語対応サイトの制作において、クライアントに対して「このフォントで大丈夫か」と問われたときに自信を持って答えられることが、Web制作者としての信頼につながります。ライセンスリスクを正しく理解したうえで、安全なフォント選択を心がけましょう。
Q. Windows PCで Microsoft YaHeiを使ってデザインカンプを作ることは問題ありませんか?
A. デザインカンプの制作自体はWindowsの利用範囲内のため、個人的な作業用途では問題はありません。ただし、そのデザインを商用Webサイトで実装する段階でフォントのライセンスを改めて確認する必要があります。
Q. Noto Sans SCはどのくらいのファイルサイズですか?
A. 中国語フォントはグリフ数が多いため、フルセットでは数MB〜数十MBになります。Google Fontsを使うとブラウザが必要なグリフのみ動的に読み込む仕組み(Unicode-range サブセット化)が適用されるため、実際の通信量は大幅に削減されます。
Q. 中国本土向けのサイトでもGoogle Fontsは使えますか?
A. 中国本土ではGoogleのサービスがブロックされているため、Google Fonts CDNが使えない場合があります。中国本土向けのサイトでは、フォントファイルを自社サーバー(または中国国内CDN)に配置し、OFLライセンスのNoto Sans SCを配信する方法を検討してください。
Q. 繁体字(台湾・香港向け)のフォントはどれを使えばよいですか?
A. 繁体字には「Noto Sans TC」(Google Fonts)または「Source Han Sans TC」(Adobe)が最適です。どちらもSIL OFLライセンスで商用利用可能です。
この記事の内容は2026年5月時点の情報に基づいています。フォントのライセンス条件は変更される場合があります。最新情報は各フォントメーカーの公式サイトでご確認ください。
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